話せるようになるために

話せるようになるために

よく聞かれることですが……

 

「どうしたら話せるようになりますか」というご質問を受けます。

 

理屈や原理はとてもシンプルです。

要は、そこそこの努力を徹底して続けること。それだけです。

 

わたし自身、一年過ごしたドイツで、ゼロから始めたドイツ語をのめりこむように

学習した結果、ドイツ語で3時間ほど口頭発表する水準に1か月で達したことがあります。

ですから、ご本人が望めば、必ずできるものだと確信しています。

 

プロフィールにも書きましたが、30代のころドイツに一年滞在しました。

夏休みに、ゲーテの二か月の短期集中コースに入りました。

そこで口頭発表の課題が出されたんです。

 

くりかえしていいますが、入る前はドイツ語はゼロ。わたしは全くの初心者でした。

もっとも英語の素地があったのは有利でした。

ご存じの通り、日本語と英語はかなり乖離した言語ですが、ドイツ語と英語はちかい。

語彙にしても、英語から類推していえるようなものも多かったのです。

 

春から夏までのうちに、基礎科の文法をかるく独学して、

 ①7文くらいの自己紹介は書ける。

 ②知人のドイツ人に、200個ほどの基本的な独文を添削してもらう、

といったくらいの準備でゲーテに入ったのです。

 

 

さて。

最高峰のスクールであるゲーテは、もちろんレッスン自体とても良いものでしたが、

この口頭発表に取り組んでいなかったら、話せるようにはならなかったと思います。

おそらく先生としては、10分~15分程度のものを期待されていたでしょうが、

当時わたしはカルト問題に傾倒していたため、どうしてもテーマをカルトと切り離せず

母語でも難しいであろうカルト問題についての体験談をとりあげて書き出したのです。

 

当時は、連日のように書いても書いても、思いがあふれて尽きることがない。

40字のA4 3枚におよぶほど書いても、まだ書き足りない思いで、

一か月ほどは、なんども書いては書き直す、という状態にありました。

ずっとドイツ語でカルトについて考え、語り、熱弁をふるっている自分がいました。

 

そんな状態で床につくものですから、朝日が射してきて

あちこちの教会の鐘の音が聞こえてくる時刻になると、

 わたしの頭の中では、かってにドイツ語ががんがん駆け巡っていたものです。

 

「……これはなんだろう……誰の声?……」まどろみながら思ったものです。

 

自分が起きているのか、眠っているのかもよくわからない。

まぶたの中がうっすらと明るくて、目を開ければそのまま起きれるだろう。

でも眠くて、まだまどろんでいたくて……聞きなれた教会の鐘の音も聞こえていて……

 

これこそ半覚醒状態だったとおもいます。

そんな状態が、一週間ほどもあったかな……

毎朝のように、自分の思いの丈がドイツ語で流れていました。

 

それでもわたしは、それだけの枚数を覚えられるわけがないと思っていたんです。

なので、当日は原稿を読むつもりでいたのです。

 

ところが。

原稿を読んでいたのでは、クラスメートはだれひとり聞いていない。

(ゲーテ全体で145か国から生徒たちが集まっており、クラスには20名前後がいました)

 

あんなに一所懸命書いたのに! 

 

悔しくなったわたしは、原稿を演題にたたきつけ、原稿を無視して話し始めました。

驚いたことに、口からするすると、とめどなくドイツ語が出てくるのです。

毎朝、頭の中で鳴り響いていたドイツ語は、やはり自分のものだった!?

 

けっきょく私の口頭発表は二日かかってしまい、

最後には、クラスメートの発案で、カルト問題についてクラスで議論することになったのです。

宗教税というものもあるような国です。

そこはもう、イベントにしか関わらない日本人の宗教観とは重みが違うのですね。

 

あいにく残念ながら、燃え尽きてしまったわたしは放心しきっていて、

その場でどんなことが話されたのか、内容はまったく残っていないのですが。

 

唯一覚えているのは、当時のドイツ人講師が、

「すごいことを成し遂げたわね!」と、褒めてくださったこと。

 

もちろん基礎科なので、男性名詞だの中性名詞だの格変化活用だのは、

ほとんど無視したスピーチレベルでしたが、

すくなくとも、大雑把にでも皆を動かすくらいには伝わった。

それは間違いないのです。

 

ですから。

話したい! 伝えたい!という熱い思いさえあれば、

その熱量だけで、誰でもじぶんの思いを伝える水準に至ることができる

できるはずなのです。

 

熱量さえあれば、だれにでもできるのです。

あなたもチャレンジしてみませんか?